第四章:フィットネスビジネスは成熟期の終末になったのか?

どんな業界のライフサイクルというものがあり、「導入期―成長期-成熟期-衰退期」の順番で変遷していくと言われている。我々歯科業界はいや日本の歯科業界は自虐的になるが衰退期に当たるであろう。何か新しい制度や革新的な技術が導入されない限りこれは変わらないと思う。
並んだ運動靴

フィットネスビジネスはライフサイクルでいえば成熟期?

話を元に戻そう。フィットネスビジネスはライフサイクルでいえば成熟期あるいは下手すると衰退期に入りつつあるのではないだろうか?
ナゼそう思うのかを話す前にここでもう少し詳しく業界にライフサイクルについて語りたいと思う。

業界のライフサイクル

先に書いた業界のライフサイクルのそれぞれの時期について解説したのが下記になる。
導入期・・・競合が少ない時期、そのためにまだ人にあまり知られていない、そのため広告の反応率が低く、集客しようとすると費用がかかる。
成長期・・・新規参入が増えていく時期、しかし広告に対する反応率は高い。説明しなくても売れる。
成熟期・・・大資本の会社が登場する時期、広告の反応率は下がる、他社のお客を奪う。お客に来てもらうには何らかの差別化が必要。
衰退期・・・業界全体の売上が下がってくる時期、リピート客中心のため小さい会社はつぶれる可能性がある。
このような業界のライフサイクルから見るとまさに今のフィットネス業界は以前からあった総合型スポーツクラブだけではなく近年は様々なタイプの小規模業態が散見されている。
例えばホットヨガスタジオやストレッチサービスを提供する施設、女性専用サーキットジム、24時間営業のジム、 トレーニング指導だけでなく食事管理や指導を行うパーソナルトレーニングジム、オンラインのパーソナルトレーニングジムなどが出てきている。
いわば今までの総合型スポーツクラブがデパートだとすると今の前述した小規模業態は専門店と考えられる。

様々なタイプの小規模業態が散見

この流れは小売業の変化と共通しているようで興味深い。なぜなら小売業も最初は街の小さな店舗で果物屋、米屋、魚屋、肉屋、衣料品店等を夫婦や家族だけで営んでいるような業態が多かった。フィットネスクラブで言えばまだフィットネスという言葉も輸入される前に体操教室等がそれに当たるだろう。
その後デパートが出来てそこですべてが揃うようになってしまい街の小さな店舗は少なくなっていった。フィットネス業界ならこのデパートが総合型スポーツクラブにあたる。たくさんの従業員を雇ってフィットネスに関する事なら何でもある状態である。
ところがバブル崩壊後に長くデフレに入った日本ではデパートは不調になった。変わりに流行っていったのが安くてもカッコイイと感じられるブランドを確立したアパレルだ。
このように見ると小売業の業態の変化も専門店⇒総合店⇒専門店のループを繰り返しているように見える。但し今の専門店が昔の専門店と違うのは大資本のチェーン店ということだ。
これまでのいわゆる総合型スポーツクラブは、見学者・体験者・問い合わせ客などの入会見込み客や実際の入会者を減らしているらしい。

会員の高齢化による定着率のアップ

それにもかかわらず、全社が業績を伸ばすことができた理由は、定着促進策の徹底に加え会員の高齢化による定着率のアップがあったようだ。
会員が高齢化すればスポーツクラブをあっちこっち変える事は面倒だし単に忘れているから変えないという事もあるだろうが、それだけでなく通う手段が限られていたり、そこを離れるとせっかくできたコミュニティとの繋がりもなくなってしまうのでその面からも変える事は少ないのだろう。
しかしもう少し時が進みこのよう少子高齢化は変化なくても人口自体がさらに減ってきたらどの業界も同じ悩みを抱えているだろうがフィットネスを行う国民の割合が増えないかぎり今の店舗数では明らかに過剰になってきてしまうだろう。

オンラインのトレーニング指導

そこでこれから新たに人手不足や設備投資を少なくする手段としてITの発達によりこれまでは考えられなかった営業形態があげられる。それは先にもあげたオンラインのトレーニング指導だ。これはアメリカではもうポピュラーに行われていて詳細はまた調査後に記事にしていきたいと思うがどうやらメールやSNSを利用して動画や写真を送受信して食事やトレーニング指導を行うらしい。
この営業形態が日本でどこまで浸透するかは未知数だ。ただし次世代通信システムとして騒がれている「5G」が普及する事で大容量の送受信ができる事でもしかしたら指導される側と指導する側がVR装置を介してトレーニングを行ったり鍛える部位に筋電計を付けてチャンと所定の筋肉に刺激が加わっているかなどをリアルタイムに見て指導するなんての事ができるようになるかもしれない。
話は少し脱線するがこのような事はオモチャ屋業界に起きているのではないだろうか。オモチャ屋さんも小売業ではあるがその変化がより自分のこれまでに人生を振り返ってみるとより肌感覚で感じられたので書いてみたいと思う。
昔は街には必ず1軒はオモチャがあった。プラモデルやゴムを巻いて飛ぶ組み立て式の飛行機などが売られていた。自分が小さい頃はお小遣いがたまると街のそういったオモチャ屋さんでプラモデルを買ってきて組み立てたり、野原で飛行機を飛ばしたものだ。
しかし1家に1台車が普及してくると郊外のロードサイドに品揃えも豊富なオモチャのチェーン店が出来た。街のオモチャ屋さんよりは大きな店舗だった。そしてそのオモチャ屋の広告が新聞の折込みチラシに入ってきた。広告を見ると街のオモチャ屋では見たこともないような新しいオモチャが売られているようだ。お客はそちらに流れていった。
さらに時が進むとやがてアメリカからオモチャ屋の黒船がやってきた。以前の日本のチェーン店よりも巨大な店舗でさらに品揃えも豊富だ。TVCMもどんどん行われた。ロードサイドのあったオモチャ屋には置いてなかったような外国製のオモチャもあった。
そこは休みになると駐車場に車を止めるのも一苦労。お店の中も家族連れだけでなくフィギアマニアやレアものオモチャの収集家と思われる大人もいて人だらけでお目当てのオモチャにたどり着くのにも一苦労だ。
そこが賑わっている傍ら、かつてロードサイドにあったチェーン店のオモチャ屋いつの間に建物はそのままで違う業種のお店に変わっていた。建物の形がそのままのでそれが余計に昔を知るものには物悲しく感じられた。
しかしオモチャ屋の黒船もかげりが見えはじめてきた。インターネットの普及だ。自分の欲しいものや子供に買ってやりたいものを右手でポッチと押すだけで宅配されてしまうからだ。どこで買おうが同じオモチャはオモチャだ。早く手に入りしかも安い方がよい。
これを技術革新の面で情報と移動という観点から見ていくとこのようにも見られるのではないだろうか?
1番目の革新は
情報:紙媒体による限られた地域への一方的な情報伝達
移動:モータリゼィショにより人の行動範囲が広がった
2番目の革新は
情報:電波を媒介としたマスメディアによる全国規模の不特定多数への一方的な情報伝達
移動:商品の受け取るには本人が移動する必要がある
3番目の革新は
情報:一方的な情報伝達ではなく双方向性の情報伝達(単にインターネットがあるだけでなくそれまでによりも大きな情報のやり取りが可能になったため、通信速度や通信容量に関わるデータの圧縮技術や光ファイバー等の技術革新)
移動:商品は宅配業者が持ってくる
このようにざっと考えてもこの50年くらいの間のいくつかの技術革新により人々の生活が少し変わりまたはある人の人生は翻弄されてきたのかもしれない。
そしてこれから起こるだろう変革は
4番目に来るであろう革新は
情報:一方的な情報伝達ではなく双方向性の情報伝達
商品はドローンや自動運転車が持ってくる(日本ではドローンよりも自動運転車のほうが現実的か?)
5番目に来るであろう革新は
情報:一方的な情報伝達ではなく双方向性の情報伝達
移動:商品はデータとして送られてきてリアルタイムでCAD/CAM装置のようなもので作られる?
のでないだろうか?
ここまで想像してみるとITを媒介してVR装置や筋電計を利用した遠隔のパーソナルトレーニングはさほどハードルが高いとは思えないのだがどうだろうか?

アメリカにはあって日本にはなかったフィットネス関連のサービス

さてもう少しアナログな事に話しを戻したい。それはアメリカにはあって日本にはなかったフィットネス関連のサービス。
それは適切なフィットネスを行う際に食事の宅配サービスだ。実はこのようなサービスがアメリカにはある事を知ったのは数年前だ。
自分も糖尿病や腎臓病の人に向けてカロリーや塩分やタンパク質を調整した食事を宅配するサービスがあるのは知っていた。しかしにこれはあくまでそのような病気になった人や境界域にいる人たちのためのサービスだ。
比較的健康な人がボディメイキングを目的として取りたい食事の内容とは異なるのだ。普段自分も自炊したり妻に協力してもらう事も多いのだがそれを毎日するのも大変と思う時もある。
何しろ食材に重量を測ってカロリー計算やPFCバランスを考えなければならないからだ。
また同じような食材が続くので正直飽きる時もあり自分でも「何やってるんだ」という思いが頭の片隅をよぎる時もある。

食事の宅配サービス

しかしある時にYouTubeを見ているとアメリカでは有名な元ボディビルダーが作った会社でサプリメントだけではなく食事の宅配サービスを行っている事をしった。
1食分がワンパッケージになっていてレンジでチンするだけで食事ができるというものだ。元々アメリカの食事にはいわゆるTVディナーと言われる食文化と言えるのか微妙なものだがそのような商品がありメインディッシュと付け合わせが、すべてトレイにセットされた冷凍食品の事をいう。
その名前の由来はお気づきのように「テレビを見ながら食べられる、お手軽ディナー」という触れ込みでスワンソン社のGerry Thomas氏が、1954年に「スワンソンTVディナー」を発明したのが始まりだ。
しかし自分が見つけた商品はそのTVディナーよりは少なくともカロリーやPFCバランスは健康的に作られているらしいのだ。実際にそのYouTube動画の中で元ボディビルダーでその会社の社長がその商品を食べている動画も配信していた。
そのため試しに輸入してみようとしたがアメリカ国内にしか販売しないようなのでその商品はあきらめ日本国内にそのような商品はないものかと探したがその当時は見つからなかった。
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ボディメイキングのため食事の宅配

しかし1年ほど前からそのようなサービスをい始めた会社が出てきたようだ。以前からあった病人のための食事ではなくあくまでボディメイキングのために食事の宅配だ。
割高ではあるのだがカロリーやPFCバランスは考えられているようなので今度注文してみようと思う。
このようにフィットネス業界にもその他の分野の技術革新や日本にはまだないサービスの導入によりまだまだ成長できる可能性もあるようだ。我々歯科業界も参考にしていきたいと思うばかりだ。
因みに日本の一般の貴兄はご存じないかもしれないがアメリカのトップボディビルダーはサプリメントの会社を経営している事が多く競技者であると同時に経営者でもあるのだ。
その本人や本人の体が広告塔でその会社のサプリメントを使えばあんな体になれるのではないかという心理を利用しているともいえる。
日本でもすでにボディビル系の人たちの中にはサプリメント販売やアパレル販売会社を作って始めている人たちも出始めている。
これからは日本にもこのような競技者兼経営者という人たちがボディビルという分野だけではなく出てくるのかもしれない。
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