糖尿病にブラッシング 歯周病と深い関係

糖尿病と歯周病。この二つに密接なつながりがあることが、最近の研究で分かってきた。糖尿病患者は歯肉炎や歯周炎(歯周病)を起こしやすく、歯周病の糖尿病患者は血糖のコントロールが難しくなる、という悪循環だ。歯の健康は全身の健康維持に欠かせず、医師と歯科医師が連携したチーム医療が重要だという。

世界に糖尿病患者は二億四千六百万人いて、毎年新たに七百万人が糖尿病にかかっているという。日本で糖尿病が強く疑われる人は八百九十万人で、予備軍は千三百二十万人(二〇〇七年、厚生労働省調べ)。〇二年に比べて総数で五百九十万人も増えている。
糖尿病は、膵臓(すいぞう)が分泌するインスリンの量やその効果が低下して、高血糖が続く疾患。自覚症状がなく、合併症を発症して進行する。網膜症、腎症、神経障害が三大合併症。次いで、心疾患、脳卒中が続く。
そして、「第六の合併症」として注目されているのが「歯周病」。歯茎と歯を支える骨に影響し、やがて歯を失う。日本糖尿病学会は糖尿病治療ガイドの〇八年版に初めて糖尿病の合併症として歯周病を加え、相互作用があることを認めた。

「糖尿病患者は健康な人に比べて歯周病に二-三倍かかりやすい。糖尿病と歯周病の両方にかかっている患者は血糖コントロールが悪くなりやすく、心疾患や腎疾患が悪化しやすい」。四月、国際医療フォーラム「『人類の病』糖尿病と歯周病」が東京都で開かれ、ニューヨーク州立大バファロー校のロバート・J・ジェンコ名誉教授はこう報告した。
糖尿病で抵抗力が低下すると、組織を修復する力が弱まったり、炎症による組織破壊が進んだりして歯周病が悪化する。
歯周病が進んで歯を失うと、かむ機能が低下。脂肪と糖分が多く、食物繊維の少ない食事になり、糖尿病を悪化させるという。追跡調査では、歯周病の人は、過去一、二カ月前の血糖値の状態を表す「ヘモグロビン(Hb)A1c」の値が上昇していた。「歯周病で血糖コントロールが難しくなる」とジェンコ名誉教授は話す。
では、糖尿病患者が歯周病を治療するとどうなるか。サンスター歯科保健振興財団付属千里歯科診療所歯周病専門医の梶原定江さんは症例を紹介した。
通常7%未満とされるヘモグロビンA1cが、9・4%だった糖尿病患者の男性を糖尿病専門医と連携して歯周病の治療をした結果、五カ月後に7・4%に改善。その後もクリーニングなどメンテナンスを続け、今は6・1%前後。「歯周病治療で血糖コントロールもかなり改善した」(梶原さん)
日本歯周病学会理事長で日本大歯学部の伊藤公一教授は「歯周病菌がずっと糖尿病患者の口中にあると、インスリンの働きを悪くする炎症性の物質がたくさん出て血糖値が下がりにくくなる」と説明。「糖尿病をすぐ治せといっても難しい。正しいブラッシングを身に付け、細菌数を減らすことから始めては」と勧める。
米ハーバード大ジョスリン糖尿病センターのアジア・クリニック・ディレクターのウィリアム・C・シューさんは「糖尿病は非常に複雑。食生活を管理し、運動も必要、薬も飲まないといけない。だから、医師や歯科医師、栄養士など専門分野のチームが必要になる」と指摘する。
フォーラムで座長を務めた国立国際医療センター研究所の春日雅人所長は「糖尿病と歯周病はサイレントキラー。自覚症状に頼らず、年一、二回はかかりつけの医師、歯科医師に血糖値や歯の状態を診てもらう。医師は糖尿病患者を診たら歯周病がないか、歯科医師は歯周病患者を診たら糖尿病がないかをチェックし、早期発見、早期治療につなげることが重要」とアドバイスする。
(東京新聞より)
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