歯周病の患者が増えている。初期の歯肉炎を含めると、今や、全国で成人の8割と推測される。県内でも、開業歯科医らが治療と予防にあたる。宮崎大学医学部歯科口腔(こうくう)外科も3年前から、歯周病に取り組み始めた。迫田隅男教授(61)(付属病院副院長)は「本県には歯科大や歯学部がない。われわれの技術を生かし、歯周病治療の一翼を担いたい」と言う。

 

歯周病とは、歯ぐき(歯肉)と、歯が植わっているアゴの骨(歯槽骨)から成る歯の土台が、口の中の細菌感染で炎症を起こし、進行すれば、この土台を破壊する病気。

今回、宮崎市で開催する秋季日本歯周病学会で大会長を務める前田勝正・九州大学教授(歯周病学)(60)は「口の中には300~500種の細菌がいる」と指摘する。細菌が、歯と歯ぐきの間の溝などに残った食べかすを栄養に増殖し、固まったのが、歯周病の主な原因になるプラーク(歯垢(しこう))だ。時間がたつと、歯石になる。

プラークを放置すると、歯ぐきが炎症を起こし、歯との間の溝が深まり、歯周ポケットができる。進行すると、歯周ポケットは深くなり、さらにプラークや歯石がたまり、悪化する。

歯周病は、炎症が歯ぐきにだけ起きた「歯肉炎」(歯周ポケットの深さ3ミリ以内)と、歯槽骨にも広がった「歯周炎」(軽度=同4~5ミリ、中等度=6~9ミリ、重度=10ミリ以上)に大別。初めは歯ぐきの腫れ、出血などの症状が出、やがて歯根が露出し、抜けてしまう。歯周病菌はさらに全身の血管に入ったり炎症を起こしたりし、心臓病、動脈硬化症、糖尿病などに重大な影響を及ぼす。

 

今回の市民公開講座で講師・パネリストを務める三浦真由美助教は「残せそうにない歯を治し、患者さんに喜んで頂けるのが私の喜び」と話す。70歳代の女性を診た時。他の歯科医院で「この歯は残せない。総入れ歯だ」と言われ、落胆していた。うどんがかみ切れないほど歯はぐらぐらだった。プラークを除去し、歯は残せた。2か月後、「何でも食べられる」ようになった。

「歯周病の予防・治療には、歯みがきが大事。歯間ブラシなどを使って、丁寧に磨くこと。それでも、完璧(かんぺき)には磨けない。自覚症状も出にくい。早めに出血で気づいて受診した人は幸運です」と三浦助教。進行して気づくことが多いからだ。

 

治療は軽い場合、歯みがき、歯石除去ですむが、重くなると、歯ぐきを切開しプラーク・歯石を取り除く外科手術、再生療法(外科手術の際に特殊なたんぱく質を塗りつけたりして歯槽骨の再生を促す)となり、それで手に負えない時は抜歯に至る。

迫田教授率いる宮大歯科口腔外科は本来、口腔がん、顎変形症、口唇口蓋裂などの治療にあたり、腰の骨などを移植する手術に習熟。「移植して、スムーズに骨形成する技術を歯周病の患者さんにも応用したい」と意欲を語る。

(読売新聞より)