歯周病が進み、歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)の深さが四ミリ以上と中等度以上になると、外科手術の対象となる。動物由来のタンパク質などを利用し、歯槽骨など歯周組織を再生させる「再生療法」が注目されている。(鈴木久美子)

東京都内の主婦、宗像敬子さん(62)は今年四月、日本大学歯学部付属歯科病院(東京都千代田区)で外科再生療法のひとつ、「バイオ・リジェネレーション法」という歯周病の手術を受けた。

歯周ポケットの深さが四ミリ以上と、病気の進行具合は中等度。ずきずき痛むため日常生活にも支障が出ていた。

同法は、歯周病に侵された歯の歯肉を切り開き、まず歯根から歯周病菌の塊である歯こうや歯石を取り除く。次に歯槽骨など歯周組織の再生を促すため、食用ブタの歯のもとである歯胚(しはい)から抽出したタンパク質「エナメルマトリックスタンパク」を歯根に塗る。この際、歯肉を歯根と密着させず空間を作って縫合する。こうすることでタンパク質を塗った歯根上に、歯根膜から増殖した細胞が引き寄せられ、それにより歯槽骨や歯のセメント質が再生される。

同法は健康保険は適用されていない。ただし、国が先進医療として承認している治療法なので、医療機関によっては治療費は自己負担になっても、それ以外の検査や痛み止めなどの薬代は健康保険が適用される。

宗像さんの手術は約二時間で済んだ。費用は健康保険が使えた検査や薬代など除き約六万円だった。六月にも別の歯で同治療を受け、その後は毎月、定期通院し歯槽骨などの再生の経過を観察している。

「若いころは虫歯がなく、歯磨きも丁寧にやってこなかったが、後悔している。自分の歯でかんで食べたい」と治療後は歯磨きに励んでいる。

歯周病の外科手術としては、歯の歯肉を切り開き、歯根から歯こうや歯石を取り除く手術が長年、行われてきた。「再生療法」は、その基本手術を応用した手術で、歯周組織再生誘導法(GTR法)とバイオ・リジェネレーション法がある。

GTR法は、歯肉を切り開いて歯根をきれいにした後に、特殊な遮へい膜を歯肉と歯根との間にはり縫合する。歯根膜から出てくる細胞が増殖しやすい空間を遮へい膜で作り、歯肉と歯根が接しないようにする。

遮へい膜には、乳酸とグリコール酸の合成高分子膜、牛のアキレスけんなどから抽出したコラーゲン膜、フッ素樹脂膜の三種がある。高分子膜とコラーゲン膜は体内に吸収されるので、手術は一回で済む。この二種類の膜を使った治療は、昨年四月から健康保険が適用されるようになった。患者の自己負担は約五千円。

バイオ・リジェネレーション法は最も新しい治療法。遮へい膜をはるより手術が簡便で、歯槽骨が広範囲に溶けている場合にもできるなど、GTR法より対象が広い点が利点だ。各地の歯周病専門医のいる大学病院など設備の整った医療機関で受診できる。

バイオ・リジェネレーション法もGTR法も半年から一年で再生が完了する。

日本歯周病学会理事長の伊藤公一・日本大学歯学部教授は「完全に元通りには再生できなくとも、かなり抜歯を防ぐことはできる」と話す。

実際、どの治療法を選ぶかは、歯槽骨の残り具合や、アレルギーの有無、費用などによって異なる。伊藤教授は「十分に説明を受け、納得して治療を受けてほしい」。さらに「再発しないよう、毎日正しく歯磨きを続けることも忘れないで」とアドバイスする。

(2009年11月13日 中日新聞より)